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『対ゲキだヨ!全員集合』

3演出家集合!トーク

10月の3週連続3県ツアーから3ヶ月。4ヶ所目の公演地・大阪公演を終えた最終日に、出場3団体の演出家による対談を実施。宮城・愛知・大阪からやってきた3団体が、これまでの紆余曲折の旅の道程や作品への思い入れ、最終ツアー地東京公演への意気込みをガチンコで語らいました!

 

【対談】

澤野正樹(短距離男道ミサイル 総合演出)

ニノキノコスター(オレンヂスタ 作・演出)

山本正典(コトリ会議 作・演出)

インタビュー・文・写真:佐和ぐりこ(オレンヂスタ)

−−ちょっと記憶を遡って、このツアーをやる前の各団体への印象を教えてください。

澤野:この3団体で初めに一緒に顔を合わせたのが名古屋の「ミソゲキ」なんですが、その時からぼんやり思っていました。

もともと短距離男道ミサイルが対ゲキをやっているというのがあったので、いつか一緒にできたらいいなと思っていた先輩方。先輩方の胸をいつか借りたいなと三坂さん(制作協力)に相談した結果、今回の対ゲキが実現したという経緯があります。

なので僕は各地域の先輩方とご一緒できるドキドキという感じがありました。

※「ミソゲキ」…毎年年末に名古屋ナンジャーレにて行われるショーケースイベント。2012年に短距離男道ミサイルとオレンヂスタ、2013年に短距離男道ミサイルとコトリ会議、2014年に短距離男道ミサイルとオレンヂスタが出場した。

 

山本:先輩?

澤野:先輩なんですよ、劇団の設立でいうと先輩。

−−それぞれ、劇団の設立は?

山本:コトリ会議、2008年ですかね。

ニノ:オレンヂスタは2009年。

澤野:短距離(男道ミサイル)は2011年

−−じゃあ、少し先輩ですね。

澤野:そう。

山本:そうだったんだ。

−−山本さんは、どうですか?

山本:僕はミソゲキで、短距離男道ミサイルさんとオレンヂスタさんとは絶対一緒の組にはなりたくないなと思って。

2人:(爆笑)

山本:そしたらね、よりによってその2団体から声をかけていただいたんで、せっかくなら売られた喧嘩は買いましょう、と参加を決意しました。

ニノ:対バンに着想を得た対ゲキですもんね。ガチンコ勝負ですよね。

山本:そう。だから、いつまでもそんな小さな会話劇みたいなことしてんじゃねぇぞ!ってことなんだろうな、と思ってね。

−−一緒になりたくないと思ったのはなぜなんですか?

山本:うるさいからですね。

ニノ:(笑)確かにうるさい。どっちもうるさい。

山本:だからやだなーって思って。すいません。で実際うるさかったじゃないですか。

澤野:(笑)

ニノ:私は両方ともミソゲキで拝見したんですけど、その時のイメージが、(短距離男道)ミサイルさんは、熱量!裸!男!ミサイル!って感じで、コトリ会議さんは、言葉の抒情詩的なところとか、

山本:かっこいい(笑)

ニノ:構造とか、ふんわりやわらかいのに美しい、とか、思っていたので、対ゲキもそんな感じになるのかなと思っていました。

 

−−4ヶ所のツアーを共にしてきて、印象は変わりましたか?

山本:変わらなかった(笑)

澤野:変わらない部分は変わらないですけど、単純に仲良くなって、というかこれだけ寝食を共にしていると、地域を超えてチームワークを生まれるということがすごく貴重なことだし、僕としては楽しいしうれしいことだなと思っています。

山本:確かに、系統の違う3団体なんですけど、稽古風景場当たり風景見ているうちに、あ、こういう風にして芝居を創っていくんだ、っていうところが勉強にもなったし吸収していこうと思ったし、それはすごいためになりました。

−−みなさん4ヶ所とも、本拠地の都市以外では全員一緒に劇場泊でしたね。

澤野:なんで大阪公演なのに、山本さんは帰らないのか!

ニノ:(笑)

山本:3県が楽しすぎて!少しでもみんなと一緒にいようと思って。

ニノ:絶対嘘だ〜。

山本:ホントにホントに!さみしかったの(笑)

 

−−ツアー中最大に印象に残っている、やばかったエピソードはありますか?

山本:やっぱり仙台の劇場に行ってみたら、ミサイルのみなさんがずっと険しい顔で舞台美術を作っていたこと!

ニノ:これ言っていいのかな? 仕込み当日にミサイルのたたきが終わってなかったことは衝撃でしたね。

山本:すごい剣幕でね、

ニノ:カンカンカンってね、あれがビックハプニングじゃないですか、一番の。

澤野:僕ら基本裸なのでね、今回みたいに建て込むことが初めての挑戦だったので…ご迷惑をおかけしました。

山本:ハイ、かかりました(笑)

−−なんでまたこの企画で…とはもっぱらの話題でしたね。

澤野:そうなんですよ。名古屋のお客さんから「こんなの持ってきちゃダメだよ!」って

−−(笑)お客様からのまさかのお叱り!

澤野:「ナンジャーレのこと知っているはずなのに、なんでこんなことになったんだ!」って言われました。

2人:(爆笑)

−−新潟公演での商店街練り歩きもすごかったですね。

澤野:あれ反響どうだったんだろう。

ニノ:あったんじゃないですか? Twitterとかでも、名古屋公演の予約しているであろう人とかが「これはヤバイ!行かなきゃ!」みたいなリアクションをしていて、次にも繋がったんじゃないかな。

山本:えんとつシアターさんの宣伝にはなりましたよね。劇場アピール。

ニノ:簡単にいうと、(短距離男道ミサイルが)ほぼ全裸で商店街を練り歩いたっていう。

−−ちょうど公演日が商店街のお祭りの日だったんですよね。

山本:可愛いお姉さんから手振っていただいてね。喜んで写真撮られたり。

ニノ:おばさまがたに写真撮られたりね。

山本:楽しかった。

 

−–ぶっちゃけ、他団体の作品の感想を教えてください!

澤野:ここまで「家族」っていう共通のテーマで、いろんな方向にいくものなんだなって思いました。お客様の感想でもそういうのがあったんですが、どこも一つとして普通の家族を描いたところがなかったという。

ニノ:家族って聞くと結構、朗らかな「サザエさん」みたいなの想像してたってお客様が結構いらっしゃったんですけど、よくよく考えたら、この3作品とも「本当の家族じゃないかもしれない」っていうところがあって、それが今の時代を表しているんじゃないかとも私は思ったのです。

山本:そうですね。みんな人死んでますしね。

ニノ:死んでないよ。

澤野:えっ死んでないんですか? 死にまくってるじゃないですか。

ニノ:みんな(全作品)は、死んでないでしょ。

山本:死んでますよ。うちも台本変わっても、必ず誰か殺してますから。

澤野:だいたい(コトリ会議の)室屋さん死んでますよね。

山本:死んでますね(笑)可哀想だ!室屋さんは。

−−人を死なせるのが好きな団体が集まっちゃったんですね。

ニノ:そう考えるとかなりアグレッシブなお題ですね、「家族」って。対極になりそうな雰囲気なのに。

 

−−なぜみなさん「家族」というお題から、ああいった作品になったのですか?

澤野:「家族」というお題はミサイルから提案させていただいて、僕はすごく個人的なことなのですが、家族が増えたので。去年の1月に子供が生まれて。それで、自分の子供への想いとか、自分たちの住む地域への想いとかを、一応込めた上で、ああいう作りにしているんだけど、

ニノ:そうなんですか?

澤野:ミサイルの悩みは、そういうことをほぼほぼ100%のお客さんが拾ってくれないこと。

山本:いや悩んでないでしょ(笑)ほんまに悩んでるんですか、そこ。

澤野:いや悩んでるから今回演出をちょっとだけ変えた。

ニノ:いつもは、古典をもとに、メタ構造というか、出演者の方達のパーソナリティを取り入れているのに、今回は作からやってらっしゃいますよね?

澤野:原作(カレル・チャペック『R.U.R.』)はあるんですけどね、あと僕はロボットが大好きで。本当に個人的な嗜好で作品を作っているひどい演出なんですよ(笑)。

山本:そんなもんですよ。

2人:(笑)

ニノ:私はそもそも作で「家族」がテーマとなった時に、(自分の)家が機能不全家庭で、理想の家族とか家族ってなんなんだろう?っていう(疑問が)幼少の頃からあったので、「家族ってお題マジ?なに?え?」ってなったんですよ。そこからフィクショナブルに、ちょっと真面目に家族について考えないといけないなと。同じような家庭で育った人も世の中にはいると思うので、そういう人にとっての何かしらのきっかけになればいいなという思いで書きました。

澤野:家族のことを捉え直す作品なのかなとは、ここまでの経過を見ていて思っていました。今回(大阪公演で)大幅に演出が変わったじゃないですか。

ニノ:ハイ。

澤野:僕あの度胸がすごいなと思って。僕は全然そんなこと思いもしなかったので、今回かなりドカンとこられたなと思ったんですけど。

ニノ:澤野さん、でもよく思い出してください…この4都市すべてで(演出どころか)作品も出演者も違う団体がひとつあるんですよ…

澤野:ええ?どこだ??

ニノ:うち(オレンヂスタ)でもない、ミサイルでもない…

山本:偉大な、勇敢なことをしたと思います、その劇団は。

2人:(笑)

山本:素晴らしいと思います。……ハイ、すみませんでした、迷惑かけて!いっつも新しい作品で場当たりやり直して!

澤野:(照明・音響)オペレーターがかわいそうだったよ。

山本:本当にね。台本も送らないし、僕。

澤野:(爆笑)今回の作品(大阪公演『あたたたかな北上』)って、(パンフレットに掲載していた)家族構成も全員バラバラだったから、どの辺が家族なのかなって思ったんですけど

ニノ:これから家族になっていく人たちの話?

山本:そうですね、それと3県の作品と今回大阪とで全て共通しているのが、家族と「距離」ですね。離れてしまっている人に対して、いろんなアプローチというか。単純に僕は実家が福井でずっと親元を離れて暮らしているので、(家族が)どんな風に感じているのかとふと思うことがありまして、そこに着目して書くようにしているというのがあります。

−−「家族」というと「ひとつ屋根の下」というイメージがありますが、そうじゃない家族はどういった形になるのか、というようなことでしょうか?

山本:そうですね、離れていても家族は家族、というのもあるので。

ニノ:そしたらうち(オレンヂスタ)は逆なんでしょうね。近くにいても、家族も他人。っていうような。

山本:あー、そうですね。

ニノ:私、愛がないですね。私も福井に家族が欲しい。

山本:僕は家族愛たっぷりなところで過ごしてきたと思っているので。

澤野:今回の(コトリ会議の)作品って、対ゲキ自体のことがイメージにあるんじゃないかって読んでたんですけど、そんなことはない?それは僕の勝手な深読み?

山本:それはあると思いますよ。いろんな都市を巡っていろんな人に巡り合ってっていうこれまでの旅ですよね。『あたたた…』?

澤野:『あたたたかな』。

山本:『あたたたかな北上』っていうのは、そういう話でもあるので。

ニノ:あ、じゃあ最終的に『対ゲキだヨ!全員集合』は火星公演があるんですね。

山本:行っちゃいますか。NASAがちょっと前に募集してましたよね、確か。火星に行く人。

澤野:ちょっと搬入が可能かっていう…

ニノ:一回バラシて火星で組み立てれば…

山本:火星に鉱物はふんだんにあると思いますから、そういったものを利用して…あとだいたい多分一人芝居になると思いますね。

2人:(爆笑)

山本:役者も舞台美術も連れていけない。

 

−−もしこの東京のあとにツアー行くならって話も聞こうと思っていたんですが…まさか火星に行くとは(笑)

山本:いや行きたくないですよ(笑)

澤野:俺いきたいなー。

ニノ:私も行きたいです。日本全県まず行きたい。

−−じゃあ地球上で行きたいところありますか?

澤野:まずは僕は海を越えたいから、日本の中では、四国・九州・北海道あたりには行けたら素敵だなって思いますね。

山本:僕は非常にミニマムな話ですけど、実家の福井に。福井のお客様が演劇慣れしているかわからないし、自分の両親が観てもちんぷんかんぷんだと思うんですけど。頑張ってるなっていうことは見せたいなって思いますね。

澤野:そう考えると、(実家のある)秋田にも行きたいな。

ニノ:いいですね、凱旋公演。

山本:あのお芝居で実家に…?心配されないですかね?

澤野:そんなことはないと思うけど…僕はもともと工学部を目指して実家を出たので、ずっとロボットが作りたかったんです。さっきの距離と家族の関係と、っていう話を言うと、僕はゼロから作りたかったんですよね、家族を。僕はそうなんだなと思って。

ニノ:あーなるほどなぁ。

澤野:だから僕の実家の人たちはミサイルの今回の作品を見たら、「夢が叶ったね」って言ってくれるんじゃないかな(笑)知らないけど(笑)

山本:うわーそれ泣いちゃうかもしれない。いいですね。

澤野:海外もチャンスがあれば行きたいですよね。

ニノ:アジア圏がいい気がする。なんとなく。まずは香港とか近しい文化のところとか。

−−短距離男道ミサイルの原作『R.U.R.』はどこの作品でしたっけ?

澤野:あれはチェコですね。チェコでやったらどうなんだろうな、あの作品。

山本:僕の知り合いの大阪のお客さんが、短距離男道ミサイルさん、最近見たインドのSF映画にそっくりだって言ってました。SF映画なのになんでかみんなが突然踊りだすっていう。

澤野:たぶんそれ僕も見たやつだ。『ロボット』っていうタイトルの映画じゃないかな? インドのヒーローみたいな有名な俳優さんが100人くらい出てきて、合体したりするっていう。

2人:(爆笑)

山本:これはインド行くしかない。…って(佐和に)なにメモしてるんですか!

−−いや、今後のツアーの参考に…四国からのインドからの火星か、と(笑)

澤野:でも本当に宇宙旅行は身近になりましたからね。家族旅行で月に行くとか夢じゃない。(ツアー公演で)地球の外をまわるっていうのもあるかもしれない。

山本:これだけツアーするために僕らあと何年生きてたらいいんですかね。

澤野:自然と「旅」っていうテーマもついてまわりますね。この企画は。

山本:次はみんな各地に違う作品で行きましょうよ。

澤野:その土地で(創作)ね、言葉が使えないかもしれないですからね。

−−では最後に、話しておきたいことはありますか?

澤野:今回の対ゲキは第一歩だと思っていて、行く地域にとっても自分たちにとっても。「家族」というお題で全力で作品作りに取り組んでいる上で、ショーケースというイメージも強い。ぜひこれから行く東京の方々には、各地域の若手の集団がどんなことをしているのかを見てもらった上で、この先に(対ゲキのような)競作がもっと生まれないかなと。この次のステージも想像しながら、ひとまずは東京を残して、それぞれの地域の今後に期待したい。

ニノ:私たち対ゲキ一族が行った先で、新しい対ゲキが生まれたりしても楽しいですよね。

澤野:はやらせましょう。

−−作品同士としても、4ヶ所目ともなるとお互いの作品のことをわかってきて、その上で「あそこ違ったよね」なんて話も出てたりしますよね。

澤野:さっきのぶっちゃけトークとかも、本当はお酒とか入ってもっとぶっちゃけて話したい気持ちもある。そこをもっとぐちゃぐちゃになってやってみたい。

ニノ:実はまだこの3人だけでグイグイ飲みながら話すってやってなくて。

澤野:そうそう。

ニノ:やりたいよね。

山本:じゃあ今からやりましょう大阪で!

澤野:僕あと1時間で大阪出ないと…

山本:なんでそんなスケジュールになってるの!(笑)東京ではやりましょう。

 

−−この3団体の関係性もこれからという感じですよね。制作としても今回の枠組みは面白くて、各地域に呼ぶという形で各地をツアーできる、単独公演ではない強みがあります。

ニノ:澤野さんの総合演出が受付にまで行き届いていて、まさか受付がコスプレするなんてね。

澤野:すいません、無茶言いまして(笑)でももっとやりたいと思っているので、東京はさらにパワーアップして。

−−特にこまばアゴラ劇場での東京公演は、各団体単独だとまだラインナップに採用されなかったかもしれないけれど、3団体で手を組んだからできたというところがあります。だから他の団体も真似したらいいと思います。

澤野:トーナメントとかね。

ニノ:トーナメントウケそう。ジャンプ世代に。

山本:連載行き詰まったときの方法でしょトーナメントって(笑)

ニノ:演劇界が今行き詰まっているということかも。行き詰まった演劇界での生き残りをかけて!(笑)

 

4ヶ所のツアーを終えて3団体の交流が深まり、お互いに作品作りに影響を与え合っていることがわかりました。さらには東京公演、その先への展望にも触れられた対談となりました。本企画の集大成ともなる東京公演、どうぞご期待下さい。

2016年4月1日(金)~3日(日)

4/1 (金) 19:00

4/2 (土) 13:00/18:00

4/3 (日) 11:00/16:00

 

会場:こまばアゴラ劇場

料金:前売 2800円/当日 3300円

上演時間:2時間25分(途中休憩2回あり)

3団体各40分、休憩各10分

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